東国武将たちの戦国史(2015 Facebook記事を修正)

東国武将たちの戦国史 「軍事」的視点から読み解く人物と作戦
西股総生(著)
河出書房新社 (2015/9/30) 1,600円(税抜)

 軍事史的観点から史実の背景を読み解き、当時の武将たちの意図や、直面した戦況にまで踏み込んで、 「武将たちは、なぜそのような行動をとったのか?」という問いに応えていきます。

 古河公方・足利成氏が活躍した享徳の乱のなかで起きた、上杉方・長尾景春の乱。戦場が関東各地にひろがり、「なぜそこで戦うの?」と思う場面が多い乱でした。筆者は、太田道灌がもくろんだ「道灌ライン」戦略的自給体制構築と、それを切り崩そうとする景春という構図を提示。戦闘の流れを分かりやすいものにします。

 河越合戦では、関東管領上杉家・古河公方連合軍が小田原北条家と戦います。ここでも、なぜ圧倒的に優勢だった上杉軍は、北条軍が立てこもる河越城を攻め落とさなかったのか?北条氏康の奇襲を待つことになったのか? という問いに応えます。上杉憲政は決して愚将ではありませんでした。作戦も至極まっとうで、勝利する可能性も高かった。しかし政治を軍事に優先させたため、城を攻略する好機を失います。憲政にとって公方を味方にした政治的意義は小さくなかった。それを最大限に活かそうとしたものの、氏康の投機的だが最適なタイミングで全力を集中した攻撃に敗れた、と読み解きました。

 さらに、上杉謙信は本当に上杉憲政の要請に応じて越山(関東侵攻)したのか?なぜ憲政が越後に逃れてから、越山までに8年もの空白期間があったのか?豊臣秀吉の小田原攻囲は本当に当初の構想通りだったのか?予定通りなら、なぜ強引に八王子城を強襲したのか? 秀吉のあせりを示唆しているのでは?など、さまざまな視点で関東の戦国時代を切り取っていきます。

 その他にも、伊勢宗瑞と北条氏綱、武田信虎の甲斐統一、越後・長尾為景の下剋上、甲斐武田家の山本管助、武田信玄の関東侵攻、武田勝頼の苦闘など、豊富な話題を取り上げており、読み応え十分です。

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