(2015 Facebook記事を修正)
中世の東国 地域と権力
峰岸純夫(著)
東京大学出版会(1989/4/25) 4,500円(税抜)(*1)
専門書ですが、古河公方研究のエポックメイキングとして、知っておきたい本です。
ご存じの通り、1454年に始まる【享徳の乱】のため、鎌倉公方・足利成氏が古河に移座し、古河公方が生まれました。この享徳の乱は、関東戦国時代の幕を開けた事件でもありました。近年は日本全国の戦国時代についても、きっかけは 1467 年の応仁・文明の乱より、この享徳の乱がふさわしいのでは?と提起されており、注目度が高くなっています。
しかし、この「享徳の乱」という名称が生まれたのは、そんなに古いことではありません。この本のなかの論文「東国における十五世紀後半の内乱の意義―享徳の乱を中心に―」(*2) にて、 峰岸先生が提唱され、多くの専門家の支持を得て、定着していったのです。もちろん以前から、古河公方と上杉氏・室町幕府とが激しく戦っていたことは知られていましたが、重要な事件とは認識されず、乱の名称すらなかったのです。
古河公方に対する評価が変わるきっかけのひとつ、ともいえる論文です。
*1: 現在絶版だが、6,800円の複刊版あり
*2: 初出は、「東国における十五世紀後半の内乱の意義」『地方史研究』No.66, 1963