現代思想・東と西の語る日本の歴史(2015 Facebook記事を修正)

現代思想 vol.42-19〈2月臨時増刊号〉
青土社(2014/12/30) 1,800円(税抜)

東と西の語る日本の歴史(講談社学術文庫)
網野 善彦 (著)
講談社(1998/9/10) 1,100円(税抜)

 日本史学者の網野善彦先生は、つい見落しがちになる様々な事実に光を当て、歴史のもつ豊かな表情を描き出しました。「百姓と農民は同じではない」と言ったかと思うと、非人や芸能民という社会の底辺とされた人々を取り上げ、歴史を作るのは権力者だけではない、こうした人々も歴史の重要な構成要素であると語ります。

 日本史というときの「日本」の概念にもメスを当てます。私たちは「日本」という単一の国家が古代から現代まで綿々と続いていると考えがちですが、先生は源頼朝以後、鎌倉を中心とする「東国国家」(幕府)と、京都を中心とする「西国国家」(朝廷)の二つの国家が並立していたとします。このうち東国国家は、鎌倉幕府から室町時代の鎌倉府、さらに鎌倉府を継承した古河府(古河公方)、小田原北条氏、江戸幕府と受け継がれていきました。この話題は先生の著書『東と西の語る日本の歴史』に詳しく紹介されています。

 網野先生の意見はとてもユニークです。共感出来るところも出来ないところもありますが、教科書や常識にとらわれない、多様な歴史観を持つことを教えてくれました。

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