享徳の乱と太田道灌(2015 Facebook記事を修正)

享徳の乱と太田道灌 (敗者の日本史8)
山田 邦明 (著)
吉川弘文館(2015/1/1) 2,800円(税抜)

 山田先生は、室町時代・戦国時代を専門とする歴史学者。
 太田道灌は享徳の乱にて、古河公方・足利成氏と関東管領・山内上杉氏、扇谷上杉氏が戦った際には、扇谷上杉氏の武将として成氏と激しい戦いを繰り広げました。名将として知られ、享徳の乱でも大活躍しましたが、乱の終結後に下剋上を警戒した主君・上杉定正によって謀殺されます。当時、裏切りは日常茶飯事。そのためもあってか、この時代の歴史は敵と味方が入り乱れて分かりにくく、勉強するのに骨が折れます。

 こんな時代を対象にしながら、今回の本は、個々の事件の背景を丁寧に説明してあり、予備知識がなくても比較的読みやすくなっていました。(専門家の多くは、確実に史料の裏付けがあることだけをシンプルに記述する傾向があり、内容も素っ気なくなりがちです。)

 足利成氏の人物評も。「京都の将軍から逆賊と断じられながら、・・・自分の地位を守り抜いたわけで、その手腕と粘り腰はたいしたものだ・・・」(P.190)と、他の本にはあまり見られない率直な書きぶりが印象的でした。古河公方からは敵の立場で書かれていますが、面白く読めました。

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