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常総内海の中世
千野原 靖方(著)
崙書房出版(2007/10/25) 3,800円(税抜)
古河公方の時代、古河から銚子に至る現在の利根川下流には、広大な内海がありました。古河市南部にかつて存在した大山沼・釈迦沼・水海沼などを最上流とする常陸川は、鬼怒川・小貝川と合流して、本書タイトルの常総内海につながります。この内海は干拓等で縮小され、現在は印旛沼、霞ヶ浦、北浦などに分断されていますが、当時、茨城県と千葉県の間は、今の東京湾に匹敵する広大な内海だったのです。
この内海と周辺の河川・湖沼地帯には、古河公方領国、および公方と主従関係にあった奉公衆・在地領主が展開していました。著者は、古河公方領国を「水の領国」と呼んでいます。古河公方の経済基盤は、農業生産だけでなく、水上交通による流通・物流も重要です。
歴史的事件の背景を考えるときには、このような当時の地理的条件にも目を向けなくては、と思います。例えば、古河公方とその傍流・小弓公方との激しい戦いは、この内海の水上交通支配権をめぐるものでした。また小弓公方が滅びた国府台合戦も、なぜここで戦ったのかと考えるとき、小弓(今の千葉市)から古河に進軍するには、 地続きの場所がここだけだったという要因もありました。
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