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北関東の戦国時代
江田 郁夫、簗瀬 大輔 編
高志書院(2013/3/20) 6,000円(税抜)
平成23年に開催された北関東三館(茨城県立歴史館・栃木県立博物館・群馬県立歴史博物館)連続シンポジウム、「北関東の戦国時代」の講演・報告を収録。足利成氏が鎌倉から古河に移座したことを、関東の首都が南関東から北関東に移動したとみなし、十五世紀後半の北関東にフォーカスしたものです。本書では専門家10人が古河公方や佐竹氏・那須氏など多彩なテーマを取り上げています。
内山俊身先生は古河地域が東国の首都性を帯びた背景を考察。享徳の乱の際に足利成氏が新たな拠点として古河地域を選んだ理由として、従来の政治面の議論だけでなく経済・流通面の考察が重要であることを指摘。古河地域は関東二大水系の接点(舟による水上交通幹線の十字路)だったこと、さらに川戸台遺跡などが示唆する東北地方に向けた物流拠点だったこともあわせると、東北・関東地方をカバーする東国流通の要でした。また新旧二つの東都、古河と鎌倉を比較。鎌倉は京都との連絡を前提とし、日本国東部の中心である「東都」。一方で、古河は京都との連絡を絶たれた足利成氏にとって、東日本独立国家の首都「東都」であり、京都と対峙するものだったという斬新な見方を提示します。
簗瀬大輔先生は中世の渡良瀬川(足利~古河)を解説。現在の渡良瀬川と川筋が異なること、洪水が多発したこととともに、古河公方側近・舞木氏や下野藤岡城主・茂呂氏など舟運経営に携わった「川の領主」たちが支配していたことを示しています。
山田邦明先生は十五世紀後半の古河公方・足利成氏と政氏の時代について、最近の研究を反映させつつ、関東の情勢を分かりやすく要領よく解説。短時間に勉強したいときに良いと思いました。
専門家以外の人にも比較的読みやすい本です。
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