(2014 Facebook記事を修正)
東国の戦国合戦
市村高男(著)
吉川弘文館(2009/1/1) 2,500円(税抜)
本書は「関東戦国史(全)」と同様に、東国(関東)戦国時代の全体像を描いていますが、少し視点が変わっています。
大きな違いは戦国時代が始まる時期で、本書では永正の乱としています。東国の戦国時代は、初代古河公方・足利成氏が活躍した享徳の乱から始まるという見方と、二代公方・政氏と三代・高基が争った永正の乱から始まるという見方の両方があり、専門家により異なります。個人的にはより大規模な戦乱だった享徳の乱に納得感がありますが、政治権力に着目すると、室町期の影響が残った享徳の乱に対して、古河公方などの多くの武家の中で、大規模な勢力交代が起きた「永正の乱」の方を変化点とすべきとの見方もあり、これもまた無視できません。
ところで古河公方家では、この永正の乱を筆頭に多くの内紛が繰り返されます。あまりに多いので、以前は公方家の問題点は何だろうと考えていました。これは多くの本で「公方家の内紛が関東各地の領主層を巻き込んだ」と説明されていたからです。しかし、本書によれば実態は逆であり、各地の「旧族領主層の内紛と、それによって変化する彼らとの関係への対応が、公方家の分裂・抗争を引き起こした基本的要因であった」(P.65) と指摘されています。すなわち、当時は内紛が多発した時代であり、古河公方家も時代の流れと無縁ではなかったと理解すべきなのです。「公方家の問題点は何?」という最初の問いの立て方が間違っていたということですね。
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