江戸湾をめぐる中世(2014 Facebook記事を修正)

江戸湾をめぐる中世
佐藤博信(著)
思文閣出版(2000/7/1) 5,600円(税抜)

 佐藤博信先生は、古河公方研究で有名な中世東国史の専門家です。本書では、房総半島から江戸、鎌倉までの江戸湾(東京湾)の湊津にて、流通・運送業に活躍した室町時代・戦国時代の氏族と政治権力との関わりについて考察。

 古河公方関連で、まず紹介したかったのは品川・鳥海氏の論説です。品川は当時、江戸湾に面した港湾都市であり、古河公方勢力の流通拠点でした。ここで最大の流通商人、宇田川氏・鳥海氏は官途授与などを通じて、古河公方と関わりを持っていました。鳥海氏出身の臨済宗住持、三伯昌伊・天甫昌園兄弟は、今は廃寺となった古河・永仙院の住持を務めたあと、鎌倉・円覚寺に入って、戦国時代に焼失した堂宇の再建に活躍。この再建を経済面で支えたのも品川です。当時、古河~品川~鎌倉をつなぐネットワークが形成されていたと考えられています。

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