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葛西城と古河公方足利義氏
葛飾区郷土と天文の博物館(編)
雄山閣 (2010/5/30) 3,800円(税抜)
葛飾区郷土と天文の博物館で開催された、古河公方の特別展シンポジウムを基にまとめられたものです。
かつての古河地域は「下総国西葛飾郡」に属していました。古河城が面する渡良瀬川は、今は利根川の支流となり、その利根川も東進して銚子で太平洋に注いでいます。しかし古河公方の時代、渡良瀬川と利根川は並走して南下し、東京湾に注いでいました。太日川と呼ばれた渡良瀬川下流(おおむね今の江戸川)によって、古河と葛飾区は結ばれていたのです。昔は舟が重要な交通手段でした。
最後の古河公方・第五代足利義氏は一時期、葛西城に滞在しました。本書の内容は、葛西城発掘調査結果、および足利義氏が葛西城を拠点とした背景です。当時この地域を支配した小田原北条氏との関係が中心になりますが、興味深かったのは長塚孝先生の論説でした。古河公方領国は、現在の古河地域とその南側、すなわち栗橋・五霞・関宿・幸手・春日部・吉川などに広がっていましたが、その他にも上総国、今の千葉県市原市の養老川周辺が含まれていたそうです。当時の上総国では小田原北条氏が勢力を伸ばしつつあり、帰属が流動的になったため、古河公方としても目を離せなくなりました。そこで、古河地域と上総国の両方に近い葛西城を拠点としたというものです。
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