桃まつりと土井利勝(2016 Facebook記事を修正)

 毎年3月には古河公方公園で桃まつりが行われています。

江戸時代の古河藩主・土井利勝(1573 - 1644)は、江戸時代初期の幕府大老でした。まだ成立したばかりの幕府を盤石にしようと心を砕き、さらに古河藩隆盛の基盤を固めた人です。古河の桃林は、利勝が薪不足の対策として桃の植林を奨励したことが始まります。これは享保12年(1727)に書かれた『落穂集』での逸話。大正期の末まで、古河の鴻巣・長谷・牧野地・原に桃の老木があり、人々の目を楽しませていたそうです。 残念ながら、この老木は病気のため全滅しましたが、昭和50年の公園造成時に再び植えられ、現在の古河に桃園が再現されました。

 利勝には他にもエピソードがたくさんあります。徳川家康、秀忠、家光に重用され、幕府の中で権勢をふるいましたが、あまりにも権力が集中したので、 「利勝は家康の御落胤(隠し子)に違いない。だから家康に重用されたのだ」とも噂されました。あるとき利勝は、家康に似ていると言われるのを嫌い、少しでも風貌を変えるため、髭を剃りました(土井家譜)。 しかもさらに話が広がって、事情を知らない周囲の武士たちは利勝をまねて、いっせいに髭を剃り落とし、それ以来江戸の武士は髭を伸ばさなくなった、とも言われているようです。ここまで来ると真偽のほどは不明ですが、それだけ利勝の存在感が大きかったということでしょう。

参考文献
 『古河市史 民俗編』古河市(昭和58年)
 『歴史の散歩―鷹見泉石と古河藩―』「桃まつりと公方行列」古河市(平成8年)
 鷹見安二郎『土井利勝―出自問題と事蹟―』古河市(昭和50年)

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